前癌病変とは癌になる可能性がある病変のことで、
正常組織よりも癌を発生しやすい形態学的に変化した組織を指します。
白板症や紅板症などがあります。
前癌状態とは癌になる可能性が高くなった状態です。
梅毒性口内炎や口腔扁平苔癬、Plummer-Vinson症候群、口腔粘膜下線維腫症などが該当します。
●前癌病変の定義 正常組織よりも癌を発生しやすい形態学的に変化した組織。(WHO 1972年)
●前癌状態の定義 癌発生の危険性が有意に増加した一般的状態。(WHO 1972年)
だいぶ古い分類のしかたですので、同義語としても使われることがあります。
口腔扁平苔癬について今日は書きます。
原因はまだわかっていませんが、日々の診療でたまに見られます。
あまり珍しい病気ではありません。
口の中の粘膜に幅1~2mmぐらいのレース状、網状の模様を呈することが多く、
しばしば白い線状の内側には発赤やびらん(ただれ)(浅い潰瘍みたいなもの)がみられます。
この網状模様は日時の経過とともに赤みを帯びたり、その形状を変えます。
接触により出血しやすく痛みがでます。
この白色の線状をなした病変は角化の異常を示すもので、病変は左右対称に生じることが多いです。
頬粘膜は白色の病変を主としますが、発赤やびらん、潰瘍を伴うこともあるのが特徴的で、ときに小水疱を生じます。
慢性の経過をたどったものは暗褐色の色素沈着が見られることもあります。
舌では斑状の白色の病変が特徴的で、小豆大~大豆大の境界明瞭な乳白色の斑で、やや扁平に隆起し、舌乳頭(ベロの表面のツブツブ)は消失して触れるとやや硬く、痛みを伴います。
歯肉では白色線状の病変がみられることもありますが、この部位で特徴的なものは、び慢性の紅潮、萎縮像です。
扁平苔癬はこのように多彩な現れ方をするため、種々の分類がされています。
網状型、丘疹型、線状型、斑状型、びらんまたは潰瘍型、小水疱型、色素沈着型などです。
自覚症状としては、疼痛がもっとも多く、次いで口腔の荒れ、出血、不快感、味覚異常、灼熱感などです。
症状はきわめてゆっくりとした経過をたどり、その期間は1~10年程度のものが多いとされています。
網状型のものは自然治癒も期待できますが、潰瘍型では一般に期待できません。
原因として考えられているものはいくつかあります。
最も有力視されているのは、自分を守る免疫細胞のT細胞が、
粘膜の上皮基底細胞を攻撃してしまう自己免疫疾患です。
そのほかの原因として考えられているものに以下のものがあります。
(外傷性)・・・・ とがった歯や入れ歯が、いつも傷を作る場所にできるもの。
治療はいつも口腔粘膜にあたっているとがった歯や入れ歯などを丸めます。
(ウィルス性)・・・・C型肝炎ウィルスも原因の一つとみられています。
(高血圧)・・・・高血圧の治療を同時にしていきます。
(糖尿病)・・・・糖尿病治療で血糖値を安定させます。
(細菌性)・・・・口腔内が不潔な場合はクリニックで定期的に徹底的にクリーニングをします。
抗生剤を処方する場合もあります。
糸状菌の感染が疑われる場合もあります。
(梅毒性)・・・・梅毒を治します。
(寄生虫性)・・・・寄生虫の駆除を行います。
(遺伝性)・・・・これはしょうがないです。
(喫煙)・・・・禁煙です。
(金属アレルギー)・・・・口の中の歯科金属をすべて外し、セラミックなどに換えます。
入れ歯のばねが金属の場合、ばねのない入れ歯を作ります。
(ストレス)・・・・ストレスの少ない生活をする。そうできればどんなに楽か・・・。
しかしながら原因がわからないものがほとんどです。
そのため決定的な治療法はありません。
治療法としては以下のものがあります。
①ステロイド軟こうの長期塗布 (アフタゾロン、デキサルチン、ケナログ)(保険適応は無いので自費になります。)
4週間ほど使用して効果が無い場合治療薬を変えます。
病変が広い範囲にわたっていたり、軟膏が届かない部位に病変がある場合は、スプレー剤(サルコート)を使用します。
②ビタミンA製剤の服用 (ビタミンA誘導体━チガソン)(エトレチナート)
扁平苔癬の治療薬として唯一保険適応があるものですが、めちゃくちゃ高い薬です。
ひと月に保険適応で自己負担が2万円くらいかかります。
副作用もよく出て、皮膚がかゆくなったり、フケのように皮膚がポロポロ剥がれ落ちたり、唇が炎症を起こしたりします。
飲むのを中断すると、扁平苔癬が再発したりします。
胎児が奇形をおこす割合が高いため、男性は半年間、女性は2年間の服用後の避妊が必要となります。
また、2年間の献血も禁止されています。
あまり良い薬とは言えないので、チョコラADを薬局で買ったほうがましです。
③アルカロイド製剤(セファランチン)
セファランチンは円形脱毛症や白血球減少症に使用される薬ですが、口腔扁平苔癬の治療にも使用されます。
抗アレルギー作用をもつほか、末梢血管を拡張、血液の流れを改善して病変部に栄養を供給します。
セファランチンを服用することにより、症状が改善することがあります。
治療は健康保険適応外です。
④タクロリムス軟膏(プロトピック軟膏)
免疫抑制剤であるタクロリムス軟膏を使用する治療は、1999年に世界で初めて効果が報告された新しい治療方法です。
1日1~3回、2~3週間、塗ることにより、症状が改善することがあります。
症状の改善には非常に効果的であるものの、完全に治ることは少なく、治療を止めると再発する傾向があるとされています。
そのため、症状が改善した後も、時々使用する必要があります。
⑤マレイン酸イルソグラジン
胃炎や胃潰瘍の治療薬として使用されている薬です。
血液の流れをよくしたり、傷ついた粘膜の回復を促す作用があることから、口腔扁平苔癬にも効果があるとされています。
⑥漢方薬
かなり長期的に服用します。
十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)、麦門冬湯(ばくもんどうとう)、黄連解毒湯(おうれんげどくとう)、小柴胡湯(しょうさいことう)などが効果があるとされています。
ちなみに僕自身、疲れた時には補中益気湯を服用しています。
漢方薬でのアプローチは副作用をあまり気にしなくて良いのですが、
効果が出るまで長期に服用しなくてはなりません。
実は僕は漢方治療を学ぶ学会の会員ですが、40歳の僕でもかなりの若手です。
もっと若いドクターに、漢方治療を学んで欲しいと思っています。
様々な病気に効果が認められます。
実際の治療の流れです。
まず診療で扁平苔癬のような粘膜を見つけたら、1~2週間空けてまた来院していただきます。
その時点で粘膜に変化がない場合、ほんの少し病変部をメスで切除してホルマリンに浸けます。
麻酔をしますし、ほんの少しの傷ができるだけですから痛みはありません。
切除した病変を検査機関に送り、回答待ちです。
金属アレルギーのテストもしましょう。
扁平苔癬と診断されるとみなさん一様に落ち込まれます。
正直に言うと、口腔扁平苔癬は保険治療から見捨てられている感があります。
そういう病気、たくさんあります。
でも心配しないでください。
一緒に治していけばいいのですから。
「気楽に気長に」 これがこの病気を治す特効薬です。
すごく参考になりました(^_^)b
口腔扁平苔癬と言われ、早2年目になりますが、症状は良かったり悪かったりです。血圧の薬を変えたり、プロトピック軟膏を塗ったり、うがい薬使ったり・・・結果何も変わりません。プロトピックは確かに、一週間ぐらい1日2回塗ってたら、症状は消えます・・・けど、1カ月たつかたた無いかで、出てきます。パッチテストをしましたが、口腔内の金属全てを変えるお金なんか有りません。日々癌の怖さに、怯えて口の中を、ライトを照らし、見ては落ち込む日々です。結局何をしても、駄目です。助けて欲しいです。
私も、口腔扁平苔癬になっています。化学物質過敏症になり、その先生によって、両方の治療、薬と漢方で行っています。
口腔扁平苔癬の方は、なかなか効果がありません。歯科の先生からは、パッチテストをして、金属をすべてかえると言われます。150万くらいかかると言われました。無理です。
大勢の人が困っています。保険がきくようになればいいと思います。漢方で少しでも良くなればっと思っています。
がんばりましょう。みなさん!