100頭の鹿が餌場で草をはんでいる。
充分に草をはんだら、水場に移動しなくてはいけない。
まだ食べ足りない鹿、喉の渇きを覚える鹿、満足に食した鹿、様々な固体がいる。
草をはんでいるとき、不意に1頭の鹿が水場を見始める。
続くように数頭が同じ水場を見始める。
51頭目の鹿が同じ水場を見た時、群れは移動を始める。
群れの移動速度が速過ぎれば、弱い固体は脱落し外敵の餌になってしまう。
水場に着くのが遅すぎても、弱い固体は脱水で命を落としてしまう。
群れの移動を指揮するのは、決して群れのリーダーではない。
これが自然界の法則で、群れを成す者達に共通したルールだ。
渡り鳥も、魚の群れも、蟻の群れでさえも同じルールに従っている。
サーバント・リーダーシップ。
リーダーシップとはリーダーだけが発揮するものではない。
今、自分達に必要な行動を自覚したら、その者自ら率先し周囲に働きかけなければならない。
そしてその個人の意識が伝染し、集団の意識に共有化されていく。
リーダーは、個々人の知見や経験によるリーダーシップを発揮する個人を、支援するための者でなくてはならない。
僕らも群れを成す者達だ。
あなたが喉の渇きを覚えたのなら、あなたが行きたい水場を見つめなさい。
半数が水場を見るのなら僕も移動を始めよう。
僕の見る水場を半数が見るまでは動かないでいよう。
あなた達の見る水場が僕の見る水場と違うのなら、過半数に従い歩き始める。
僕たちは所詮、群れでしか生きられないのだから。
ただ水場には外敵が我々を狙って身を潜めている。
僕はその危険を排除するために神経を尖らせる。