国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。
夜の底が白くなった。
川端康成の長編小説「雪国」の冒頭ですが、
その風景を想像してください。
あなたはトンネルを抜ける汽車の中から雪国を見ていませんか?
外国の方にその文章から想像で絵を描かせると、上空から見下ろした風景をスケッチするそうです。
日本人の多くは客車の窓からの景色を思い浮かべます。
外国の方が俯瞰するのに対し、日本人は内から外を見るのです。
僕は線路からくだり、白くなった夜の底に立ち、トンネルを抜けてきた汽車の煙、客車の窓明かりを眺め、
耳は風の運んだ冷気で痛み、吐く息は白く、凍える指を庇いながら仰望しています。
俯瞰(ふかん)は、高い所から見下ろし、全体を上空から見ること。
俯瞰は他の映像に比べ、客観的で説明的だとされます。
対して車窓から観るというのは、内視・内向的で主観的。
トンネルビジョン・トンネル視とは正確な心理学用語ではありません。
恐怖や脅威、不安を感じる対象(出来事)、自己コントロールできないストレス、ばかりに意識が向けられることによって、それ以外の事象や出来事が無意識的に認識不能になり、視野・注意が相当に狭い範囲に限定されてしまうことです。
そしてあらゆる方向に対して、思慮を欠落させるのです。
長いトンネルの中で車を運転している、もしくは暗いトンネルの中で出口を探し見据えているような状態。
このトンネルビジョンの副次的効果によって、自分の狭量な主観に縛られ、他者に対する思いやりや配慮を欠き、アドバイスを聞き入れず、妄想的な程の自己主張に固執し、それが他人に対する攻撃性に繋がることもあります。
そもそもトンネル視は自己防衛時に発動する心理状態ですから、自然なことです。
トンネルを抜ける汽車の中から雪国を見ている日本人がトンネル視に陥りやすいのは、物事を客観的に俯瞰しない特性と関係が深いように思います。
今回は切歯管嚢胞・鼻口蓋管嚢胞についてです。
鼻口蓋管嚢胞とは、切歯管嚢胞とも呼ばれ、鼻口蓋管に発生する嚢胞です。
鼻口蓋管(切歯管)は、鼻腔から口蓋に走る血管・神経(鼻口蓋動・静脈、鼻口蓋神経)が通っているトンネルです。
小さいものでは無症状ですが、大きくなると、腫脹や疼痛を生じるようになります。
自覚症状が出てから初めて気づく場合と、X線撮影で偶然発見される場合とがあります。
治療には、通常は手術での全摘出手術が必要で、全摘出できれば、予後は良好で再発の心配もありません。
症状は、嚢胞の発生部位によって異なります。
前歯部の歯肉唇移行部(唇をめくって見える前歯のつけ根)に腫脹をきたすものと、口蓋(上顎のべろで触っている上の前歯のつけ根)に腫脹をきたすものとがあります。
腫脹は小さいものは無痛ですが、大きいものは舌で触るとぷくっと膨らんでおり、痛みを感じるものもあります。
また、膨らんだ部分が破けて膿が出てくることもあります。
激痛を感じるようになることもあります。
そもそも人間は胎児の時に鼻と口が繋がっています。しかし成長するにつれ頭蓋骨が固まり、隙間が埋まっていく過程でこのトンネルも細くなっていくのが正常ですが、細くならずトンネルが太いまま残ることがあります。
口腔内の上顎前歯の裏側付近にある鼻口蓋管の残存上皮が嚢胞化し、更にこの嚢胞に細菌が入り化膿してしまうのが鼻口蓋管嚢胞の原因です。
鼻口蓋管嚢胞は、鼻口蓋管の残存する上皮が嚢胞化したものだといわれていますが、特徴は、レントゲン撮影を行うとハート型に見えることです。
実際の嚢胞は円形ですが、前鼻棘(鼻の付け根の骨)が重なることでレントゲンではハート型に見えるのです。
鼻口蓋管に残存する上皮に由来する嚢胞であり、上顎中切歯後方の口蓋部骨内にできます。
鼻口蓋管嚢胞の治療は摘出で、鼻口蓋管嚢胞を完治させる事が出来ます。
嚢胞を全摘出することで痛みを消す事が出来ます。
では鼻口蓋管嚢胞(切歯管嚢胞)です。
上の前歯の根っこの先端に何か歯のようなものが埋まっています。
念のため小さいレントゲンも撮りました。
なんだか変です。CTを撮りました。
さあ手術です。
まず上顎の歯茎をそこそこ大きくめくって、
嚢胞が見えるようにします。
嚢胞を剥離して引っ張り出して切除し、正常な神経と血管を糸で縛っておきます。
きれいになりました。
次の日です。
ガオーってできます。
痛みもなく腫れもなく。
二週間後です。
結構いい感じに治ってます。
次の方です。
なんとなくハート型。
CTをみてみると、インプラントが鼻口蓋管(切歯管)に入っています。
これが原因で発生した鼻口蓋管嚢胞(切歯管嚢胞)です。
こういう状態は上の前歯にインプラントを入れる場合よく起こる事故です。
感染で腐敗した肉が絡み付いているようです。
まず抜けているインプラントを除去しておきます。
インプラントを入れて一年だそうです。
白くなった夜の底で凍えてしまいそうで、心が痛い。
かじかむ手はメスを執る握力を弱らせる。
僕はインプラントを盲信していたのだろうか。
インプラント治療に対する思いは僕のトンネルビジョンだとしても、
ただ、怒りと許容、狭量な主観と自己主張に囚われて、
自分を疑い考えることをやめてはいけない。
もう安いインプラントにはつられないでください。
大学病院でインプラントは一本45万円します。
何事も適正価格から大きく外れたものには裏があります。
ホームページ上ではどんなことも見栄え良く書けます。
いかにも業者に丸投げしたようなホームページの広告には、煌びやかな経歴や実績の文言。
真偽のほどは同業者でないと判りません。
どんな職業でも同じだと思います。
泥臭くもある虚飾と虚構にまみれて、口腔インプラントは取り返しのつかない虚像に変わってしまった。
歯茎が治ったら手術です。
本当に・・・。
感染して腐敗した肉をきれいにとって、もともとの神経管と動脈・静脈をみつけて、縛っておきます。
のうほうをきれいに剥離して切除します。
きれいになりました。
術後に出血と腫れ防止のマウスピースをはめてもらいます。
一応の治癒を迎え、義歯を入れました。
こんなことの多い僕の日常。
思うのは、トンネルビジョンに陥っている人は、自分がトンネルの中にいることを自覚していません。
トンネルビジョンから抜け出す方法は簡単で、自分がトンネルの中にいることを自覚すればいいのです。
自覚するためには、まず自分がトンネルの中にいないか、自己を疑ってみてください。
それが最初です。
学会に出席するために、めったに乗らない電車に乗りました。
乗り換えをして、地上を走る車窓からなんとなく景色を観ていたのですが、
いつの間にか僕は地下にいました。
東京メトロ、最近の地下鉄は明るいです。
液晶モニターが広告を流し、車内は明るく照らされ、中刷り広告も目を飽きさせません。
僕はしばらく、地下を走るトンネルの中にいることを自覚できずにいたのです。
それにしても日本の地下鉄は明るいです。
アメリカなら50~200、フランスは100、日本は400ルクスの照度だそうです。
輝度・照度・光度と色彩心理学の話は長くなるので・・・。
自分がトンネル視に陥っていることを自覚するのは、本当はとても難しいことです。
自己を疑えないのです、東京メトロに乗っているみたいに周りが明るすぎるから・・・。
はじめまして。
17歳の息子が切断歯菅嚢胞と診断されました。
右の4番から左の3番の根まで覆い、鼻腔にも到達している非常に大きな嚢胞だそうです。
6本の歯の神経は死んでいるそうです。
今日、大学病院にて検査をし、全身麻酔しての手術と聞きました。一週間ほどの入院も。
他にも持病があり、高校も休みがちの息子なのですが、
とても辛そうです。
また、今通っている大学病院が自宅から遠く、通院する息子の負担も気になり、近くの総合病院に転院しようか悩んでいるところです。
嚢胞の違和感がひどく、メイアクトを処方されました。
親子とも不安で、こちらを見つけて、詳しく手術内容を拝見し、少し心構えができました。
本当にありがとうございました。
大変なお仕事と存じますが、ご健勝をお祈りしています。